プロセス用途に利用する膜ハウジング選定の重要なポイントとは?
プロセス用の膜処理装置を設計する際、装置の性能を十分に発揮するためには最適な膜および膜モジュールを選定するだけではなく、プロセス用途に対応した構造を持つハウジングを選定することが非常に重要になります。プロセス用途に対応していないメンブレンハウジングを利用すると、膜処理装置が性能を発揮できないばかりではなく、膜モジュールおよび装置の破損の原因になる可能性もあります。今回の特集ではプロセス流体の分離、精製に利用される膜モジュールを装填するハウジング(圧力容器)の選定における重要なポイントについて考えてみたいと思います。
ハウジングの素材について
プ ロセス流体の処理システム全体の配管等の素材を検討するのと同様にプロセス流体を膜処理システムで適切に処理するにはハウジングの素材がプロセス流体の特性(pH、温度、化学特性など)に適合している事が必要です。ハウジングの素材が処理液に適合していない場合、多くの問題が発生する可能性があります。例えば、ハウジングの素材が溶出してプロセス液の組成に問題を生じたり、ハウジングが劣化して装置やハウジングの破損の原因になる可能性もあります。
膜処理システムでは、FRP(繊維強化プラスチック)がハウジング素材として一般的に利用されていますが、液体の特性や用途によってはステンレス・スチールを利用したり、ポリスルフォンやPTFE等のフッ素コーティングを施したハウジングが必要になる場合もあります。
ハウジングの仕様について
これも、システム全体の配管仕様を検討するのと同様ですが、プロセス流体を膜処理システムで適切に処理するには、耐圧や温度条件などはもちろんですがハウジングの仕様がプロセス流体の処理用途に適合しているかが非常に重要になる場合があります。例えば、製薬やバイオ、食品用途などのサニタリー性が要求されるプロセスでは、ハウジングにも接続部分や表面処理などにサニタリー性が要求される場合もあります。
供給/濃縮ポートの口径サイズについて
プロセス流体を膜処理するメンブレンシステムはファウリングを防止するために、クロスフロー速度を高く設計している場合がほとんどです。このためプロセス用膜システムにて利用されるハウジングは一般的な水処理膜システムと比較して、より多くの供給水と濃縮水を流すことができる構造であることが必要です。
一般的なメンブレンハウジングの供給水と濃縮水のポートの口径サイズは、プロセス用途での利用を想定していないため、大流量と低い圧力損失に対応していない場合があります。このためプロセス用途に対応したハウジングを選定することが必要です。
ATD(アンチ・テレスコーピング・デバイス)の有無について
上記のように、多くの場合プロセス流体用膜システムではクロスフロー速度が、一般的な膜処理システムよりも高く設定される場合が多いため、ハウジングにATD/LTD(アンチ・テレスコーピング・デバイス/ロード・トランスファー・デバイス)があることは非常に重要となります。ATD/LTDはスラストリングとよばれることもあります。
ATD/LTD(アンチ・テレスコーピング・デバイス/ロード・トランスファー・デバイス)とは、クロスフローによって発生する水の流れによる膜モジュールの型崩れ(テレスコーピング現象)を防止するための器具です。通常ATD/LTDはハウジング内の濃縮水出口側にあり、膜モジュールへかかる水の流れの力を分散する目的で利用されています。ATD/LTDがない場合、膜モジュールにかかるすべての力はセンター(透過水)チューブに集中するため、膜の破損やテレスコーピング現象が発生する可能性があります。
膜ハウジングのメーカーや種類によってはATD/LTDがついていないハウジングがあるため、クロスフローが高い場合ハウジングの選定には注意が必要です。
トスクでは各種耐圧および用途に応じた各種メンブレン用ハウジングを取り扱っています。各種用途におけるご相談、ご購入に関するお問い合わせは、今すぐトスクまでご連絡ください。