製薬・バイオに適した膜モジュールを利用していますか?

医療・バイオ・製薬プロセス用メンブレン膜モジュール選びのポイント

一般の水処理とは異なるバイオ・製薬での膜利用

membrane7医療・バイオ・製薬プロセスにおいて、膜(メンブレン)は必要不可欠な存在です。例えば、医薬品の製造に必要な大量の精製水の製造にメンブレンは不可欠です。また、人工透析用水や手術用手洗用水にはメンブレンで精製された水が一般的に利用されています。さらに、精製・濃縮・分離が繰り返し必要なバイオテクノロジーおよび製薬分野においてもメンブレンは不可欠な存在です。

このように、純水製造などの一般の水処理とは異なり、バイオ・製薬プロセスにおける膜の利用法は多岐にわたり運転条件もさまざまです。このためバイオ・製薬プロセスに利用される膜には独自の仕様や性能が要求されます。

そこで今回、バイオ・製薬プロセスで利用される膜モジュールを選定する際に重要となるポイントについて考えてみようと思います。

膜モジュールのサニタリー性

バイオ・製薬プロセスにおいて、サニタリー性は非常に重要な要素です。このため、用途によっては装置内の膜モジュールに液溜りが発生しないことは大変重要な要素となります。しかし、一般的なブラインシールを利用した膜モジュールの場合、ハウジングの内壁と膜モジュール外側にある無駄な隙間に濃縮水の滞留りが発生します。この液溜りは微生物付着や増殖の原因となるだけでなく、殺菌・CIP(現場洗浄)の効率性などにも影響を及ぼすことがあります。

durasan

このため、サニタリー性が要求される用途で利用される膜モジュールには液溜りが発生しない性能が要求されます。米国GEウォーター・テクノロジーズ(GE Water Technologies)社によって開発・特許取得した高い寸法精度の頑丈なネット状プラスチックで出来ているDURASANアウターラップを利用した エレメントは、ハウジング内壁と膜モジュール外側の流れをコントロールすると同時に、ブラインシールを使わずにハウジング内壁に密着するように設計されています。このため、バイオ・製薬プロセスなどのサニタリー性が要求される用途において、ハウジングの内壁と膜モジュール外側に濃縮水の滞留が発生することがありません。このブラインシールを使用しないデザインによるサニタリー性の高い膜モジュールは、エレメント外側の流れをコントロールすることにより、微生物付着や増殖の原因となる無駄な隙間を排除します。また、殺菌・洗浄(CIP)効果の向上や、すすぎ時間の短縮も可能です。

膜と膜モジュールの耐ファウリング性

水のろ過・精製において、膜ファウリング(汚れ)は原水中の不純物によって発生しますが、バイオ・製薬プロセスの場合、プロセス流体自体が膜をファウリングさせる場合があります。一般的な水処理用膜モジュールの場合(特にRO膜やNF膜の場合)、非溶解性物質(懸濁物質)を膜で処理することを考慮していない場合がほとんどなので、プロセス流体を処理した場合には深刻な膜ファウリングや膜モジュールの破損が発生する可能性があります。このため、バイオ・製薬プロセスなどのプロセス流体を扱う膜と膜モジュールの両方に、優れた耐ファウリング性能が要求されます。

耐ファウリング性能に優れたGE Water Technologiesのプロセス用の膜(RO膜、NF膜、UF膜、MF膜)は、さまざまなバイオ・製薬プロセスにおいて数多くの優れた性能を実証しています。

特にGE Water Technologiesのプロセス用RO膜とNF膜は合成複合膜でありながら、固有の膜表面の粗さがなく、膜表面は非常に滑らかです。この非常に平滑な膜表面を持つ独自3層構造膜は、微生物や微粒子の膜表面への付着を低減するとともに、優れた安定性と薬品適合性をもっています。

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さらに、GE Water Technologiesでは用途に応じたさまざまな構造のプロセス用膜エレメントを取り揃えています。この膜モジュールはプロセス流体を処理するのに最適な構造になっており、優れた耐ファウリング性を実現するとともに、安定性と優れた洗浄効率性を持ち合わせています。

膜モジュールの耐熱性について

バイオ・製薬プロセスにおいて、高温の流体を扱うことは特別なことではありません。 また、装置・システム系内の殺菌のために熱水を利用することも特別なことではありません。 しかし、一般的な逆浸透膜(RO)やナノフィルトレーション膜(NF)などの最高運転温度は45℃~50℃です。この上限値は一般的な脱塩などの純水製造においては問題ありませんが、バイオ・製薬プロセスなどのプロセス溶液を高温にて連続処理したい場合や、薬品を使用せずにシステム全体を熱水殺菌したい場合、この上限値は問題となります。

膜エレメントに耐熱性があれば、液体を高温で処理するメリットは多数あります。例えば、バイオ・製薬の製造プロセスにおいて、熱を持ったプロセス流体をそのまま処理することが可能になります。つまり、高温での膜処理はプロセス流体を前処理工程で冷ましたり、処理後工程で加熱したりする必要がなく、エネルギー効率に優れており、初期投資費用と運転費用の削減が可能になります。また、常温では処理できないような粘性の高い溶液を、高温処理することによって分離精製することも可能です。また、液体温度が上昇するにつれ、膜装置の運転に必要な圧力が下降するため、省エネルギーと操作コストの削減も可能です。

さらに膜エレメントに耐熱性があれば、製品の品質に影響する化学薬品を利用しない熱水殺菌を行うことが可能です。定期的な熱水殺菌は、有害なバクテリア増殖から膜表面を効果的に保護します。また、薬品を利用しないため、フラッシング時間の短縮が可能です。

優れた耐熱構造を採用したGE Water TechnologiesのDURATHERMエレメントは極限の運転条件において信頼できる性能を発揮します。例えば、DURATHERM HWSは、通常運転温度は50℃以下である一方、メーカー指定のプロトコルに従い、最高90℃の熱水殺菌を低圧にて行う事が可能です。また、 DURATHERM EXCELは最高80℃のプロセス流体を連続的に膜処理することが可能です。 DURATHERMエレメントは合衆国政府食品薬品局(FDA)の米国連邦政府基準(CFR) Title Vol.21によって設定されたガイドラインに適合した高品質の材料を利用しており、外周ラップには、サニタリー運転を可能にするDURASAN保護スリーブ(前述)を採用しています。DURATHERMシリーズには幅広い膜エレメントサイズとさまざまなメンブレンのタイプ(RO膜、NF膜、UF膜、 MF膜)があります。

トスクでは米国GEウォーター・テクノロジーズ(GE Water Technologies)社のバイオ・製薬プロセスに最適な逆浸透膜(RO)、ナノフィルトレーション膜(NF)、限外ろ過膜(UF)、精密濾過膜(MF)を取り扱っております。

これらのバイオ・製薬プロセス膜にはサニタリー性を重視した膜エレメントをはじめ、高pH、低pH、高温、高粘度などの過酷なプロセス過程の条件下でも使用可能なメンブレンやエレメント形状のタイプもあります。これらの膜を利用することにより、バイオ・製薬の製造におけるさまざまなプロセス溶液の分離・精製・濃縮が可能になります。