めっきリンス水は廃棄物?それとも資源?

めっき工程におけるメンブレンの役割

排水すれば有害でコストのかかる廃棄物。再利用すると???

duraslick2めっき工程は、さまざまな部品の表面処理において幅広く利用されています。このめっき工程において、めっき槽で処理された部品は、余分に付着しためっき液を洗い流すために水洗(リンス)されます。この水洗に利用したリンス廃液には、めっき液成分のニッケルやクロムなどの重金属が含まれています。

このリンス廃液を排水する場合、大量の有害物質が含まれているため、排水規制をクリアするための廃水処理が必須となります。これらの排水規制は強化の方向にあり、従来の水酸化による凝集沈殿処理では水質基準に対応できないケースやスラッジ廃棄処理コストの上昇が懸念されます。

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一方で、排水・廃棄すれば有害物質であるリンス廃液も、メンブレンの分離・濃縮・精製の性質を利用して、めっき液と水をそれぞれ分離回収することが出来れば、排水をゼロにすると同時に、めっき液のリサイクルとリンス水の削減が同時に可能になります。

実際(試行錯誤の時代もありましたが)めっき液をめっき水洗槽から回収する利用法は、逆浸透膜(RO)を利用したメンブレン・システムの最も一般的な利用法のひとつです。ROによって濃縮回収されためっき液はめっき槽に戻される一方、洗浄効率の向上が期待できる高品質で高純度なRO透過水は水洗水槽に戻されることにより、排水が全く発生することなく、水洗廃液のリサイクルが可能になります。

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めっき液回収用メンブレン・システム「受難の時代」

まだメンブレンが珍しく、工業用途に導入されて間もない数十年前から、RO膜を利用しためっき液の回収法は理想的な考えだったので、先進的なめっき施設にROシステムが導入されました。

しかし、システムの安定稼動にはいくつものハードルがありました。めっき水洗水からめっきを回収する場合、RO透過水の回収率(回収めっき液の濃縮倍率)はめっき工程のフローバランスに合わせて、非常に高くする必要があります。例えば、ニッケルめっき液の回収の場合には95%以上(20倍濃縮以上)の透過水回収率にてRO装置を運転する必要があります。このような高回収率の条件下で、装置を如何に安定稼動させるか、そして膜表面のスケールやファウリングを如何にコントロールするかがシステム導入の成功を決定する要素になります。

当初、めっき液の回収には、当時主流であった酢酸セルロース(CA)膜のROモジュールが利用されていました。(この当時はまだポリアミド系複合膜のROメンブレンは主流ではありませんでした。)酢酸セルロース膜は温度やpHの許容範囲が狭く、めっき水洗廃液を扱うメンブレン装置の運転管理は困難でした。さらに高回収率で運転することによって生じる炭酸塩によるスケール成分は酢酸セルロース膜表面を著しく加水分解してしまい、最終的に膜モジュールを破損してしまう原因となっていました。

このような初期の脆弱な膜と高回収率の過酷な運転条件によって、当時のメンブレン・システムは数ヶ月のうちに膜性能が低下し、性能を維持することが出来ませんでした。

めっき液回収用メンブレン・システム「活躍の現在」

現在、試行錯誤の時代を超えて、ROやNFを利用したメンブレン・システムは、めっき水洗水からめっき液を回収する利用例をはじめ、酸や金属の回収、水の再利用、油水分離、廃水処理等のさまざまな表面処理工程にて利用されています。

これらの利用法を可能にした要因の大きなひとつは、膜モジュールの技術進歩です。近年の新たな膜素材の登場とモジュール構成の技術進歩によって、膜エレメントの耐ファウリング性、洗浄回復性、耐熱性、運転pH範囲、コンタミ処理能力が大幅に向上しました。このため過酷な条件下でのメンブレン装置の運転が可能になっています。

トスクではフランス SUEZ社(旧 米国GEウォーター・テクノロジーズ)のメンブレン製品を中心に、各種用途に対応したスパイラル型膜モジュールおよび中空糸膜モジュールを取り扱っています。

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