熱水殺菌や高温処理が可能な耐熱仕様のスパイラル膜エレメントの利点と応用
一般的なスパイラル膜エレメントの最高運転温度は?
一般的な逆浸透(RO)膜やナノフィルトレーション(NF)膜などのスパイラル膜の仕様書を見ると最高運転温度は45℃から50℃ぐらいになっています。この上限値は一般的な脱塩などの純水製造においては問題ないのですが、食品や製薬などのプロセス溶液を高温にて連続処理したい場合や、薬品を使用せずにシステム全体を熱水殺菌したい場合、この上限値は問題となります。
今回は、高温で処理するメリットと必要性について詳しくみていきましょう。
高温で処理することのメリットって何?
液体を高温で処理するメリットはいろいろあります。膜エレメントに耐熱性があれば、食品や製薬などの製造工程において、熱を持ったプロセス流体をそのまま処理することが可能になります。つまり、高温での膜処理は、プロセス溶液を前処理工程で冷ましたり、処理後工程で加熱したりする必要がなく、エネルギー効率に優れており、初期投資費用と運転費用の削減が可能になります。また、常温では処理できないような粘性の高い溶液を、高温処理することによって分離精製することも可能です。
また、液体温度が上昇するにつれ、膜装置の運転に必要な圧力が下降するため、省エネルギーと操作コスト削減が可能です。(図1参照)
さらには、耐熱仕様の膜エレメントを利用すれば、製品の品質に影響する化学薬品を利用しない熱水殺菌を行うことが可能です。定期的な熱水殺菌は、有害なバクテリア増殖から膜表面を効果的に保護します。また、薬品を利用しないため、フラッシング時間の短縮が可能です。
どんな用途が考えられますか?
高温にて処理が可能な耐熱仕様の膜エレメントは、バイオ・製薬、医療、化学、乳業、食品、飲料、テキスタイルなど、さまざまな産業にて既に利用されています。利用用途の一例として、製薬用途などの膜システムの定期的な熱水殺菌、ボイラーや蒸発乾燥機の復水の浄化、高温の液体製品の脱水(蒸発乾燥機の代用または併用による効果増進)、高温廃液の脱水(熱水回収/廃液濃縮)、高温RO処理によるトマトジュールの濃縮、ビール製造工程における蒸発コンデンセートの処理、コージェネレーション復水の浄化、スチーム発生装置のスケール防止などがあります。
どんな種類があるの?
トスクではフランス SUEZ社(旧 米国GEウォーター・テクノロジーズの耐熱仕様メンブレン膜モジュール 「DURATHERM(デュラサーモ)」を取り扱っております。
DURATHERMシリーズには幅広いエレメントサイズとさまざまなメンブレンのタイプ(RO/NF/UF/MF)があります。